2007年09月

2007年09月29日

脱DNA宣言

武村政春著 『脱DNA宣言』を読んだ。

日経サイエンス2007年9月号 「生命の起源」という記事を読んで、RNAワールド以前の化学反応ネットワークから生命が誕生したという節を読んで、そんならRNAワールドはどんな感じかな?と思って読んだ本。

自己組織化的な視点から言えば、小さなネットワークが結合して、次第に大きなネットワークが形成されていくというストーリーのほうが納得がいく。

「RNAが中心で、DNAはRNAのバックアップコピーと考えれば、見え方が変わってくる」という話が面白かった。

RNAキャッシュについては、この本を通してはじめてその存在を知った。

日経サイエンスの記事と合わせれば、化学反応ネットワークのバックアップコピーがRNAということも言えるのか?

ジャンクDNAに関する研究が進み、セントラルドグマに反する実験結果が現れてくると、いろいろと面白い話が出てくる。

生物学の根幹に関わる話なので、これからも目が離せない。

 



2007年09月25日

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2007年09月17日

セミを捕まえる奥義


先週は、近くの公園にセミが大発生していました。

公園の木という木には、アブラゼミやミンミンゼミがたくさんとまっていて、
地面には、幼虫が出てきたと思われる穴がぽこぽこと。。。

童心にかえって捕まえてみると、簡単に手で捕まえられました。

子供のころにつかんだ奥義、

「気配を最後まで消して捕まえる」

は、今でも通用しました。


今週は、セミもだいぶ少なくなっていました。
ためしに捕まえてみたミンミンゼミは、飛ぶこともできないほど消耗していました。

夏も、もうすぐ終わりだとなと、感じてしまいました。



網走一家の養子(陽子)たち

今回は、原子核の構造についてのたとえ話です。

原子核は、正に帯電した陽子と、帯電していない中性子からできています。

なぜ、正に帯電したもの同士が結合していられるのでしょうか?
なぜ、帯電していない中性子が結合していられるのでしょうか?
なぜ、陽子だけ、中性子だけからなる原子核がないのでしょうか?

これらの疑問を解決したのは、湯川秀樹でした。
今回は、湯川の「π中間子理論」を僕なりに、たとえ話にしてみました。

★たとえ話スタート★

北海道の網走一家の親分は、日本中から有望な子供を連れてきては網走一家の
養子(陽子)にしていました。

養子になった子供は、独特の髪型をすることになっていました。

髪の毛をほとんど剃り上げ,プラスの形だけを残すのです。
ちょうど上から見るとこんな感じに見えます。

   (+)

 頭を上から見た図

網走一家には、お正月恒例の行事がありました。

夜中3時、氷点下の屋外に4人の養子が集められ、2つの暖かい帽子を渡されて、
「夜が明けるまでここで過ごしなさい」と言われるのです。

4人の養子たちは、頭がさむいので、2つの帽子を交代でかぶります。

こんな感じです。

 (+)( )
 ( )(+) 
  ↑
帽子をかぶっていない養子

交代! 交代!

 ( )(+)
 (+)( ) 


このようにして、寒い中、帽子を交換するということによって、4人は互いに近く
に集まっていることになります。


明け方、親分が迎えにきました。

4人の養子のうち、2人は帽子をかぶっていました。

親分は帽子をかぶっている2人を呼んで言いました。

「お前たち2人は、網走一家の印を帽子で隠している。」
「そんな、お前たち2人は、もう養子ではない」
「帽子をかぶっていない、あの2人に忠誠をちかって子分になれ!」

 

網走一家には、2種類の人たちがいます。

全国から連れてこられて、正月恒例行事の後も養子であり続けた人。

そして、正月恒例行事の後、養子籍から外れて子分になった人。

一家の中では、後者を、「忠誠子」と呼んでいました。

★たとえ話終了★


帽子をかぶっていない養子は、頭の(+)印が現れます。→陽子
帽子をかぶっていない養子は、頭の(+)印が隠れます。→中性子

ここで、帽子はπ中間子のたとえです。

帽子をかぶっているのが中性子です。

陽子と中性子という2種類の素粒子が核力によって結合しているというよりは、
陽子と陽子の間を帽子が行ったり来たりしていて、帽子をかぶっているときが
中性子になっていると考えたほうが、正しいイメージに近いです。

これを、僕は、「田原の帽子理論」(笑)と呼んでいます。

「田原の帽子理論」によれば、こんな原子核が存在しないのも納得できます
よね。

 (+)(+)   ( )( )


左の場合は、帽子が足りているのです。集まっている理由がありません。
右の場合は、帽子がないんです。集まっている理由がありません。

というわけで、「田原の帽子理論」によって、うまく説明できました。



スピンスピンスピン

僕は、「分かる」という行為には、2種類の型があると思っています。

それは、次の2つです。

(1)すでに分かっていることに、合理的につながる場合
(2)全く新しい概念を、頭の中に作り上げる場合


(1)のケースは、比較的簡単に理解が成立します。

基本が理解できている人が、応用問題を理解するなんていうときは、
(1)のケースですね。


一方、(2)のケースは、時間と労力を必要とします。

目の前に現れた、「未知なる概念」に対して、次のような反応をしてしまう
ことが多いです。


 すでに知っている知識から導き出そうとして失敗する。

 自分の知っている知識の中から、似ているものを探そうとして失敗する。

 これらの失敗を繰り返した後、「分からない!嫌いだ!」と拒絶する。


皆さんも、このような経験をしたことはありませんか?


数学の三角関数や、対数関数で挫折するのは、このステップを踏んでいる
場合が多いです。


新しい概念は、新種の動物みたいなものです。

どんな食べ物を食べるのか、群れを作るのかどうか、子育てはどうするのか。。
などと、しばらく観察して、特徴をつかんでいくしかありません。

その概念の横に寄り添って、しばらく一緒に過ごすしかないのです。
そのうちに、様子がつかめてきます。

 

理解の型について、体験談を一つ。

 

大学で量子力学を学んでいたときのことです。

量子力学では、「スピン」という概念が登場します。

講義で説明を聞くと、

「スピンというのは、電子の自転による角運動量のようなもんだ。」
「でも、電子は量子力学的粒子だから、自転と考えるのは誤りだ。」

と言っていました。


このように言われて、

「それじゃ、スピンと言うのをどのようにイメージすればいいんだ!!」

と、頭の中は、完全にフリーズしました。


そんなときに耳にしたのが、早稲田大学の大槻教授のスピンに関する伝説
でした。


生徒「先生、スピンがどうしても分からないんです。」
教授「君ねぇ、スピンが分からないのなら、スピンスピンスピンスピン。。。
   と、100回言いなさい。」
生徒「・・・・・。」


当時は、「そんなこと言わないで教えてあげればいいのに。。」と思ったような
気がします。


でも、今なら、真意が分かるような気がします。

田原訳をつけてみますね。

生徒「先生、スピンがどうしても、すでに知っている知識につながりません」
教授「君ねぇ、スピンが分からないのは、(1)じゃなくて(2)なんだよ。
   だから、スピンに慣れ親しんでいくしかないんだよ。」


理解の型が違うことが原因で、理解し損ねている人は、
自分が直面している問題が、どちらの型なのか、一度、考えてみてくださいね。

もしかしたら、突破口を見つけられるかもしれませんよ。



2007年09月13日

究極の物質「原子」を探せ!

「この宇宙」には、すべての物質の運動を決定する「ウンホウテイ」という
究極の原理が存在した。

ウンホウテイを使えば、物質の質量、物質にはたらく力、初期条件から、、
その物質が、これからどのように動いていくかを計算することができるのだ。

ただし、計算することさえできれば。。。


宇宙世紀4344年、スーパーコンピューター「ラプラス」が完成した。

質量、力、初期条件をラプラスに入力すれば、未来を計算することができる
ようになった。

未来省の大臣、ブン・セキは、演説でこう言った。

「みなさん、ついにわれわれは、計算能力を手に入れました。」

「後は、物質をこれ以上分割できなくなるまで分割していき、その結果として
 現れる究極の粒子の質量、力、初期条件をラプラスに入力するだけです!」

「科学省が、近いうちに、究極の粒子の存在を明らかにしてくれるはずです!」

「そのとき、われわれの未来は、われわれに理解可能になり、全ての問題は、
 解決するのです!!!」

「究極粒子プログラムの実現に向けて、全力を傾けていきましょう!」

 

1年後、科学省の大臣、東郷は、演説した。

「みなさんにうれしいお知らせと残念なお知らせが1つずつあります。」

「まず、うれしいお知らせからです。」

 

「究極の粒子の姿が、明らかになりました。」

パチ、パチ、パチ、パチ!(大きな拍手)

 


「次に、残念なお知らせです。」

「その粒子は、ウンホウテイに従っていないようなのです。」


すべての物質が、ウンホウテイにしたがっているという前提に立っていた
究極粒子プログラムは、最後の最後で、根底から覆されたのであった。


◆◆たとえ話終了◆◆

原子の構造を明らかにすることは、自然を要素に還元して、分析と統合の手法
によって理解するというストーリーにとって、不可欠でした。

究極の粒子の候補として、原子は、重要な役割を期待されていました。

原子の構造は、力学と電磁気学の枠組みの中で理解可能であり、その姿が、
いつかは明解な形で理解されるものだと信じられていたと思います。

ところが、ラザフォードの実験により、原子核は原子の大きさに比べて
とても小さいことが分かり、

「小さい原子核と、そのまわりを運動する電子」

という原子像が描かれると、物理学者はとても困ってしまったのです。

力学と電磁気が正しいなら、原子核の周りを回る電子は、加速度運動を
しながら電磁波を出し、エネルギーを失って原子核へと落ち込んで
しまうはずなのです。

この宇宙には、安定に存在する原子など、存在できないはずなのです。

ところが、実際には、多くの原子は安定に存在する。


この危機をのりこえるために、量子力学が誕生しました。

が、

それは、

「この世界は、究極の粒子の運動によって理解できる」

というストーリーの放棄でもありました。

要素還元主義によって自然を理解しようとしていた人間は、もう少しで、
その手に、究極の理解を手にするかと思いました。

けれども、最後の最後で、自然は、人間の手からするりと逃げていってしまった
のでした。

<参考リンク>大学受験学習マニュアル



フロンティアでは、仮説の旗を立てろ!

ブツリ王国では、すでに真理だと認定された事実は、「真理ブック」に
載せられ、誰もが読むことができます。

王国の人々は、珍しいものごとを探しては、「真理ブック」を参照し、そこに
載っている事実と矛盾しないかどうかを確認するのが日課です。

もし、「真理ブック」にない事実が見つかったとしたらどうするのか。

そのときは、「フロンティア宣言」をします。

すると、王国の人は、その新しい事実を説明するための仮説を自由に立てる
ことができます。

仮説はどんなに突拍子のないものでも許されます。

すでに「真理ブック」に書いてあることに仮説を付け加えれば、新事実を
すっきりと説明できればよいのです。

「フロンティア宣言」が出されると、王国の人は、いろいろな仮説を
考えます。

仮説を考えた人の家には、「真理もどきの旗」が立てられます。

誤りであることが決定するまでは、「真理もどきの旗」を立てたままに
しておきます。

旗はだんだん減っていき、最後まで残った人の仮説は、「真理」として
認定され、「真理ブック」に載ることになります。

こうして、「真理ブック」は、日々、厚くなり続けていくのです。


★たとえ話終了★

ボーアが、水素原子モデルを考えたときは、

(1)原子は、原子核と電子から構成される。
(2)原子核は、原子に対してとても小さい。

ということが、実験事実から分かっていました。

けれども、原子核の周りを電子が回っているという太陽系モデルでは、
電磁気学に従うとすると、電子が電磁波を発生してエネルギーを失い、
原子核に落ち込んでしまうため、原子が安定に存在することを説明できません
でした。

一方で、原子から出てくる光のスペクトルには、原子によって特有の
規則が現れることも分かってきました。


まさに、「フロンティア宣言」が出される状況だったのです。

ボーアは、太陽系モデルに、「量子条件」と「振動数条件」という2つの
仮説を導入し、原子から出てくる光のスペクトルを説明しました。

「量子条件」と「振動数条件」は、「真理もどき」になったのです。

その後、これらは、実験的に検証され、今では真理として認定されて
います。

原子分野を学ぶときに、真理として認定されるまでの手続きについて、
知っておくと、理解がしやすいですよ。

<参考リンク>大学受験物理学習マニュアル



英和辞書の正しい使い方と、ンジャマナ

英語の先生から、「辞書の使い方」について話を聞いていて、

  これは、物理を学ぶこととも関係しているなぁ!

と思ったので、メルマガに書くことにしました。


英和辞書を引くと、一つの英単語に対して、いくつもの日本語訳が載せてあり
ますよね。


長い間、僕は、

「この単語には、いろいろな意味があるんだ」

というように思っていたのです。

 

でも、先日、英語の講師と話をしていて、

「これは、僕のンジャマナの話と同じじゃないか!」

と気がつきました。

「幻のペット、ンジャマナ」のたとえ話
 

 

英単語というのも、物理における電場と同じように「未知の概念」なのですね。

電場を、

重力加速度みたい
風見鶏みたいでもあり、
流線の密度みたいでもあり、
地形の勾配みたいでもあるもの」

として理解していくのと同じように、いくつかの訳語を組み合わせて、立体的な
概念を表しているのだということに気がつきました。

 

訳語というのは、「○○の点では、日本語の◆◆と共通している」という
ものですね。

ですから、訳語をいくつか重ね合わせていって

「前から見ると◆◆みたいで、横は▽▽と似ていて、後ろから見ると
××みたいなもの」

として、一つの立体的なイメージを作るようなものです。

英語の教師が、

「辞書を引くときには、訳語を探すのではなく、例文を含めてすべての意味を
読みなさい。」

と言っていた意味が、ンジャマナを通して、少し分かった気がしました。

<参考リンク> 大学受験物理学習マニュアル



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電子が干渉する?(ブツブツ島のたとえの解説)

前号で、波動性と粒子性をともに持つというのはどういうことなのかという
ことを、たとえ話で説明しました。

旧来の「波動」「粒子」という概念をあてはめてはいけない。
新しい概念「量子」なんだ!と考えなくてはいけないということでした。

そこまでは分かったとして、では、いったい「量子」とは、どういうもの
なのでしょうか?

粒子のように、他の物質と衝突し、運動量を持つ存在でありながら、
波動のように、干渉して強め合ったり弱めあったりする。。。。

そんなものを、どのようにしてイメージしたらよいのでしょうか。


ここでは、「量子」の代表として「電子」を取り上げて、イメージして
みます。

まず、板とスクリーンを用意し、平行に置きます。

板には、2本のほそいすき間(スリット)があります。

スリットの向こう側には、スクリーンが置いてあります。


これは、まさに「ヤングの干渉実験」の設定と同じです。

ここに光を入射させたら、右のスリットから広がる波と、左のスリットから
広がる波とが干渉して、スクリーン上に干渉縞が現れます。


では、電子の場合はどうなると思いますか?

スリットのあたりをめがけて、電子を1発ずつ、打ち込みます。

電子は、どちらかのスリットを通過し、スクリーンに到達します。

スクリーンには、「ボス!」っと跡がつくとしましょう。


電子を次々に打ち込んでいくと、「ボス! ボス! ボスボス!」
と、スクリーンに跡がついていきます。

ここまでは、すき間にパチンコ玉を打ち込んだのと同じように
見えます。

ところが、大量の電子を打ち込んでいくと、不思議な光景に出会います。

スクリーン上に、干渉縞が現れるのです。

電子が到達した跡がたくさんついているところ(強め合っているところ)と、
電子がほとんど到達しないところ(弱めあっているところ)が現れ、

電子が到達した跡は、縞模様を作ります。

波動における干渉条件の式

(スリットからの距離の差)=(整数)×(波長)

という式に当てはめて、波長を計算してみると、

(波長)=(プランク定数)/(電子の質量 ・ 電子の速さ)

λ=h/mv

という関係が成り立ちます。

このようにして決まる波長を、ド・ブロイ波(物質波)と言います。

 

「粒子なのに、なぜ、そんなことが起こるのか?」

と思ってしまった人

「普通の粒子じゃないんです。『量子』なんです。」


新しいものに出会ったら、いろいろと調べて、新鮮な気持ちで、

「ふーん、そうなんだ。」

と、その性質を認めてあげてくださいね。



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「微積で楽しく高校物理が分かる本」著者の田原真人です。

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