2006年06月13日

ヒロシとタケシの運命はいかに

東方(とうほう)さんは、2匹のアリを飼っていました。

触覚のひとつが曲がっているのがヒロシ。
少し大きめで茶色っぽいのがタケシ。

東方さんは、この2匹の行動をぼーっと眺めているのが好きでした。

あるとき、東方さんは2匹の動きの様子を記録して、そこに特徴があるかどうかを調べることを思いつきました。

ビデオで2匹の動く様子を撮影して、2匹の動く向きと速さを矢印(速度ベクトル)で表すことにしました。

そして、その2つの速度ベクトルを合成した合成速度ベクトルの変化の様子を図に表していきました。

その合成ベクトルの向きは、あるときは右!あるときは左と変化しました。

「ヨシオが左に動いた!ヒロシはじっとしている。あっ!ヒロシが手前に動いた!」

東方さんには、速度の合成ベクトルが、2匹の意志の合意に見えていました。

合成速度ベクトルの様子を見ていると、時間をたつのを忘れてしまい、気がつくと
一日中、そのベクトルの変化を見ていたりすることもありました。


東方さんには彼女がいました。

いつもアリばかりを見ている東方さんに彼女の不満はたまる一方でした。

ある日、ついに彼女の怒りは頂点に達しました。

「ねえ!ヒロシとタケシとアタシ、どれが一番大切なの??」

一瞬、間をおいて、「キ。。キミ」と答えたその態度に、ついに彼女は爆発しました。

そして、一億匹のアリをヒロシとタケシの入った箱に注ぎ込んだのです。

ヒロシとタケシはアリの大群の中にすっかり埋もれ、無秩序にうごめく大群が
模様のように見えました。

「これでもう「速度の合成ベクトル」とやらを計算することはできないわね!」
彼女は勝ち誇ったように言いました。

東方さんは、うなだれながらつぶやきました。
「こんなに無秩序なら、計算しなくても合成ベクトルはゼロだよ。。」


★★たとえ話モード終了!★★

気体分子を扱うときには、

(1)分子数が多いため平均値で扱ってよい。
(2)分子の速度分布は等方的(とうほうてき)である。

ということが、前提になっています。

今回のたとえ話は、なぜ、分子数が多いと、等方的(特別な方向を持たないということ)になるのかというのを、一億匹のアリを使って説明しました。

この前提があるので、立方体の壁にはたらく圧力を考えるときに、どの壁の圧力も、どうせ同じなのだから、ひとつの壁を考えれば十分!として考えることができるのです。



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