2007年01月23日
ミクロ村とマクロ村の掟
昔、ミクロ村とマクロ村という2つの村がありました。
この2つの村の間には大きな山があって、お互いに行き来することはできませんでした。
2つの村には、それぞれ古くから伝わる掟があり、村人たちは、その掟にしたがって生活していました。
ミクロ村の掟は、「運動方程式」という古文書に書いてありました。
それには、村人たち一人一人がどのように行動すべきかが、詳しく書いてありました。
ミクロ村の悩みは、一人一人の行動の仕方が分かっても、村全体がどうすべきかが決められないことでした。
一方、マクロ村の掟は、「状態方程式」という古文書に書いてありました。
それには、村全体が、どのように発展していくべきかが書いてありました。
マクロ村の悩みは、村の発展のために、村人一人一人が、どのように振舞ったらよいのかが分からないことでした。
ある年、ミクロ村の若者が集まり、相談しました。
この山の向こうには解決のヒントがあるんじゃないか!
若者の代表であるボルツが、山を越える冒険に出ることにしました。
長老からは、ミクロ村に伝わる「等方性」と「平均」と書いた2つの玉を渡されました。
ボルツはみんなに見送られて出発しました。
ボルツはどんどん山の中に入っていきました。
最初の夜は、森の中で眠りました。
目が覚めると、あたりの景色がどちらを向いても同じです。
どちらから来たのか、どちらに進んだら良いのか分かりません。
ボルツが困っていると、「等方性」がピカーっとひかり、天に声が響きました。
「どちらに進んでも同じじゃー!」
ボルツは、「等方性」のおかげで危機を脱することができました。
次の日の夜は、山の頂上にある湖のほとりで眠りました。
すると、湖から龍が現れて言いました。
「この森の木の本数を3分以内に答えよ!答えられなければ食ってやる!」
ボルツは、森の一部しか見ていないのだから無理だと思い、途方にくれていると、「平均」がピカーとひかり、天に声が響きました。
「森の木が一様に生えていると仮定せよ!」
ボルツは、山の一部分に生えている木の本数から、数密度を計算し、密度×山の表面積の計算で、木の本数を計算して答えました。
龍は、それを聞いて言いました。
「なぜ、まじめにちゃんと数えようとしない。」
「私は、ちっぽけな人間なのです。自分の能力ではこれが精一杯です。」
「それに、私には、他に使命があるのです。ここで残りの人生を木を数えることに使う わけにはいかないのです。」
龍は、「ファー!!!」と口から風を出しました。
ボルツは、すごい勢いで山を転がり落ちて行きました。
ボルツは気を失ってしまいました。
ある民家でボルツは目を覚ましました。
そこは、マクロ村でした。
ボルツは、長老に会わせてもらうことにしました。
ボルツから話を聞いた長老は、祭を開くことにしました。
それは、とても盛大な祭でした。
長老は、言いました。
「今、ここに、マクロ村の掟とミクロ村の掟が出会った」
「両村の長年の悩みは、これで解決するだろう」
「ミクロとマクロがここに結ばれたのだ!」
祭は一週間ものあいだ続きました。
この祭の後、2つの村は1つになりました。
その後、
ミクロ村の出身者は、ミクロマンと呼ばれるようになりました。
マクロ村の出身者は、マクロマンと呼ばれるようになりました。
そして、両者を結んだボルツは、皆から尊敬の意を込めて、「ボルツマン」と呼ばれました。。とさ。
★たとえ話終了★
ミクロとマクロが結ばれるということが、どれだけの大事件だったのかという雰囲気を何とか伝えたいと思ったら、思わぬ長編になってしまいました。
気体分子運動論のおかげで、状態方程式PV=nRTは、分子運動と関係つけられました。
温度Tが、分子の運動エネルギーの平均値を表していることが分かったのです。
これが、マクロ側が受けた恩恵です。
一方、ミクロ側が受けた恩恵は、気体の運動エネルギーの平均値を温度計で測定できるようになったことです。
この2つが結ばれたことが、熱力学が発展するための大きなブレイクスルーに
なったのです。


