2008年02月22日
どっちが動いているの?(2)
115号では、「慣性の法則」をテーマにしました。
慣性の法則とは、
力のはたらいていない物体の運動は、静止、または、等速直線運動である。
というものです。
ここで、素朴な疑問が生じます。
「誰から見て静止なんだろう?」
この疑問に対して、身近な問題を題材にして、自分の頭で考えてみませんか?
正解を得るを焦らずに、一度、自分であれやこれやと考えてみてください。
出来上がった科目としての「物理」を学ぶのではなく、
「物理する」という行為をしてみませんか?
というわけで、その題材を提供したかったのですが、説明不足で誤解を招き、
すみませんでした。
まずは、115号掲載のたとえ話から、どこに問題があるのか、いっしょに
考えてみましょう。
-------------------- どっちが動いているの? ---------------------------
寝台特急「地球号」に乗っていた何太郎君は、後ろに流れていく景色を見て、
ふと思って、友達の勘太郎君に言いました。
「もしかして、僕たちが止まっていて、周りが後ろに動いているんじゃないか」
勘:いいじゃないか。そのときは、目的地が向こうから来てくれるだけだろ。
どっちにしろ着くのだから困らないよ。
相対的な問題だから、こっちから見れば向こうが動いている。
向こうから見れば、こっちが動いている。
何:でも、全く同じなのかな?
僕たちが進んでいるのと、目的地がこっちに来ているのと。
勘:慣性の法則で考えればいいんじゃないか。
力がはたらいていない物体は等速直線運動をするんだよね。
目的地に着くときは、どっちかが止まるんだから、そのとき減速したほうが
動いていたんだよ。
何:もし、僕たちが動いていたとしたら、電車が減速しても、僕たちは、
進み続けようとするから、前へよろけるというわけか。
勘:地面の方が動いていたとしたら、地面のほうが減速するので、
地面に立っている人がみんなよろけるのさ。
それで分かるよ。
何:でも、もしだよ。
僕たちがこの地球号で生まれ育っているとするよ。
そして、目的地に着く前に僕たちの寿命は尽きてしまうとするよ。
地球号には、一定の強さでブレーキが踏まれているとするとどうだろう?
勘:どちらかが加速度運動をしているということは、景色が等速で動いて
いないから分かるんだね。
何:でも、、一定の強さでブレーキが踏まれているから、よろけることもない。。
勘:つまり、どっちが減速しているかは分からないんだね。
結論が出なくなってしまったので、2人とも寝ることにした。
「明日になって、目的地に着けば、どっちが動いているのかわかるね。」
朝になりました。
二人が目を覚ましたときには、すでに地球号は目的地に着いて止まっていました。
------------------- たとえ話はここまで ---------------------------------
メールでいただいた問題点は次のようなものでした。
> 目的地に着くときは、どっちかが止まるんだから、そのとき減速したほうが
> 動いていたんだよ。
減速とは、最初から大地を基準にした座標系からの記述なのではないか。
「減速」なのか「加速」なのかは座標系を決めないかぎり決まらないのではないか。
(田原)問題設定があいまいでした。
一方の質量が一方に比べて十分に大きく、質量の大きいほうの物体は、
近似的に等速直線運動をしていると見なせるとします。
つまり、その物体に固定した座標系は、慣性系と見なせるものとします。
問題設定を、
「地球」と「電車」のどちらかが一方の質量が、他の一方に比べて十分に
大きく、どちらか一方に固定した座標系は慣性系と見なせる。
ということにします。
> 目的地に着くときは、どっちかが止まるんだから、そのとき減速したほうが
> 動いていたんだよ。
加速度が加わった方が「運動していて停止する側」と規定できるのか?
(例)時速100キロで近づいてくる大地にたいして、ある時点でスタートして
逃げるようにスタートして加速し始めて相対速度が0になったとき、ちょうど
駅がやってきていたとすれば運動の記述としてはOKになってしまいうのでは?
(田原)確かに、座標系に対してある制限を与えなければ、(例)のような
ことも可能になってしまいますね。
座標系を「地球」「電車」のどちらかに固定するという制限を与えて、
「減速」=相対速度が減少する というように意味を制限すればよいでしょうか。
> 勘:つまり、どっちが減速しているかは分からないんだね。
減速=加速度運動している方は非慣性系になるわけですから、どちらが減速して
いるかどうか分かるのでは?
(田原)これをもうちょっと考えてみたいです。
電車が等加速度運動をしているとします。電車の中にいる人にとっては、
進行方向へ一定の慣性力を感じるとします。
天井のつり革は、一定の角度で前方に傾いて静止していることでしょう。
このとき、電車に乗っている人が次のように考えたとします。
(1)電車が加速度運動をしている。
(2)電車の床が傾いている。
この2つを区別するにはどうしたらよいでしょうか?
今回は、とても興味深く、生産的なご意見をいただきました。
たとえ話といえども、設定を、もっとちゃんとしなくてはと思いました。
よい機会ですから、座標系について、掘り下げて考えたいと思います。
みなさんも、よろしければ「自分はこう考える」というメールを送ってください。
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